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血液中の脂肪には、LDLコレステロール(いわゆる悪玉)、HDLコレステロール(いわゆる善玉)、中性脂肪があります。これらの異常を「高脂血症」と呼んでいましたが、善玉コレステロールの場合は「低い方が問題」になることから、(1)悪玉コレステロール値が高い (2)善玉コレステロール値が低い (3)中性脂肪値が高い ことを「脂質異常症」と呼ぶことになりました。 |
脂質異常症自体には症状がありませんが、全身の血管(動脈)の中で静かに動脈硬化を進めます。進行すると血管が硬くなり、徐々に内側が狭くなりその先の血流を障害します。 心臓に栄養を送る血管(冠動脈)がつまれば心筋梗塞になりますし、脳の血管がつまれば脳梗塞になります。その結果、命を脅かす、あるは麻痺などの後遺症を残してしまう事になります。「悪玉コレステロールが低ければ低いほど、動脈硬化による病気を予防できる」という根拠があります。20年前までは「一旦できた血管内の動脈硬化(プラーク)は、小さくなることはありません」と説明していましたが、その後、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を70mg/dL未満にすると動脈硬化が改善する(プラークが小さくなる)ことも分かってきました。患者さんがお持ちの危険度と見合わせ、どの程度コレステロールを低下させるべきかを判断し、治療の方法や内容を検討します。特に危険度が高い人は「心筋梗塞や狭心症を起こした人」「若年発症の心筋梗塞の家族歴(遺伝)がある人」「脳卒中を起こした人」「糖尿病の人」「腎臓が悪い人」「足の血管が動脈硬化で狭くなっている人」などです。 一時、コレステロールを下げる「スタチン」という薬の副作用がマスコミ等で大きく取り上げられ、不安を感じる患者さんが増えました。ヨーロッパでは、同じような風潮によりスタチンを中止する患者さんが増えた結果、心臓発作が大きく増えたという事象も確認されています。横紋筋融解という副作用は10万人に2-3例と言われています。危険度の高い患者さんに関しては「副作用を心配して脂質異常を放置する危険性よりは、薬を使って脳梗塞や心筋梗塞を予防した方がいい」という考え方は、昨今の新型コロナワクチンの考え方と似ているかもしれませんね。スタチンを使った治療で目標を達成できない場合、小腸でコレステロールの吸収を抑える薬を併用する場合もあります。中性脂肪が高い場合には、運動やダイエットの他、魚の油から抽出したお薬や中性脂肪低下薬をお勧めする場合もあります。 家族性高コレステロール血症という遺伝性の脂質異常症があります。LDL-コレステロールが180mg/dL以上、手や足に黄色腫(黄色いしこり)がある、ご家族に若年発症の急性心筋梗塞の方がいる。などが診断の手がかりになります。この場合、注射薬での強力な治療が可能になりましたので、心配な方はご相談ください。 |